研究概要 |
不斉が分子の性質に大きな影響を与えることから,ラセン不斉に興味がもたれている.ヘリセンは立体的な要因のために多環芳香族化合物がねじれた構造をとり,ラセン不斉を有する化合物である.本研究ではヘリセンを連結した光学活性大環状化合物に着目した. ヘリセンを含む大環状アセチレンのうちで,3量体が有機溶媒中で強く選択的に二分子会合することに注目し,この現象を「非平面系π-π相互作用」と命名した.今回、環状アセチレン部をリンカーで連結したオリゴマーを合成して会合挙動を検討した.その結果、柔軟な構造のリンカー部を持つ二量体はリンカー部で折れ曲がって強く分子内会合した.これに対し,剛直な構造のブタジインリンカーを有する二量体は二分子間会合との平衡にある.また、剛直なリンカー部を有する三量体は高次会合することなく強く二分子会合した.さらに、アゾ基で連結した二量体を合成した.ここで,trans-体とcis-体は熱と光に安定で,互いに異性化しないことがわかった.また、trans-体はクロロホルム中で2mM以下の濃度では単量体と二量体の平衡にあり,2mM以上では二量体として存在することを示した.この化合物も高次会合しない.一方,cis-体は1mM以下では三量体として存在し,1mM以上では重合した.シス-アゾ基は剛直で120度の角度をもつので,cis-体は分子内会合することができない.また,2つの[3+3]シクロアルキン部が同一平面上に存在することもできないので,二分子間会合できない.その結果として重合するものと考えられる. リンカー部の構造によって,分子内会合,二分子間会合および重合を精密に制御できることが明らかになった.π-π相互作用のみによって会合状態を精密に制御できることは興味深い. 以上に加えて、ヘリセンを含む鎖状オリゴアセチレンを合成して会合状態を調べた.
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