研究概要 |
アルキン二分子の低原子価遷移金属に対する酸化的環化によって生じるメタラシクロペンタジエンは、アルキンの環化三量化等の中間体として用いられてきたが、有機金属化合物との反応に利用する例は、我々が報告したパラジウム触媒によるアルキンの二量化カルボスタニル化以外にほとんどなかった。本研究では、種々の有機金属化合物を、この対称なパラダサイクルあるいは異なる二種の不飽和化合物の低原子価遷移金属に対する酸化的環化で生じる非対称メタラサイクル中間体と反応させることで、複雑な炭素骨格を一挙に構築できる付加反応を開発することを目的とした。 まず、アルキンの二量化カルボスタニル化における有機スズ化合物の代わりにジシランを、アセチレンジカルボン酸ジメチルとPd-ジイミン触媒存在下で反応させたところ、アルキンの二量化ビスシリル化生成物である1,4-ビスシリルー1,3-ブタジエン誘導体が得られることを見つけた。電子豊富なジシランの反応では、o-ホスフィノフェノラート配位子がより効果的だった。 また、ニッケル触媒存在下アルキンと1,2-ジエンのタンデムアルキニルスタニル化が、高い立体および位置選択性で進行することを見つけた。ニッケル触媒存在下、アルキニルスズと末端アルキン、1,2-ヘプタジエンを50℃で24時間反応させると、アルキンと1,2-ジエンのタンデムアルキニルスタニル化体が得られる。反応の一部は、アルキンと1,2-ヘプタジエンのニッケル(0)錯体に対する酸化的環化で生じるニッケラシクロペンテン中間体を経由して進行しているものと考えている。
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