研究概要 |
反応基質の接近方向を効果的に制御する、ペンタメチルシクロペンタジエニル配位子を装着した2価ルテニウム錯体Cp*Ru(cod)Clを触媒前駆体として用い、種々の1,6-ジイン類とシアノギ酸エチルのような電子欠損性ニトリルを、1,2-ジクロロエタン中60〜90℃で反応させることにより、双環状ピリジン誘導体が効率よく得られた。一方、マロノニトリルのようなジシアニド類をニトリル反応基質として用いた場合には、室温から60℃のより穏和な条件下環化付加が進行し、同様の双環状ピリジン誘導体を収率よく得た。 次に、これらのルテニウム触媒ピリジン環化反応を多環状ピリジン合成へと拡張するため、アルキン反応基質として新たに1,6,8,13-および1,6,11.16-テトラインを設計・合成し、マロノニトリルとのタンデム型環化付加反応へと展開した。その結果、10mol%のルテニウム錯体存在下に、1,6,8,13-テトラインを過剰量のマロノニトリルと加熱反応させることにより、双環状ピリジン二分子が互いにピリジン環の2位で結合した、2,2'-ビピリジン誘導体を高選択的にかつ高収率で得ることに成功した。また、1,6,11.16-テトラインとマロノニトリルの反応は、双環状ピリジン二分子が3原子連結鎖で繋がれた柔軟なビスピリジン誘導体を、中程度の収率ながら与えた。 更にルテニウム触媒環化付加反応を、チオイソシアネートや電子欠損性ケトンに適用して、イミノチオピランやジヒドロピランの開環生成物を与える、斬新な環化カップリング法を開発することに成功した。
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