研究概要 |
近年、多彩な構造を持つポルフィリンアナローグの合成が盛んになり、新規なオリゴピロールおよびその環化手法の開発は重要性を増している。本研究ではポルフィリノイドの最も重要な合成中間体であるアザフルベニウムイオンの脱プロトン化体であるアザフルベンの単離に初めて成功し、これを利用した中性条件下でのポルフィリノイド合成反応の特徴を明らかにした。 (1)2,2'-ビスアザフルベンを用いる合成:2,2'-ビピロールのアロイル化、還元を経て合成した5,5'-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2'-ビピロールを二炭酸-t-ブチル、ジメチルアミノピリジンを用いる脱水反応によりビスアザフルベンに高収率で変換する新手法を確立した。これにより、種々の置換基を有するポルフィリノイドの合成が可能になった。 (2)2,2'-ジメチルジビリルメタンを用いる合成:2,2'-ビピロールと5,5'-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2'ジピリルメタンとの反応では酸触媒としてTFAを用いると、カリックス[6]フィリンが主生成物となり、Sc(OTf)_3を用いるとカリックス[8]フィリンが主生成物となった。カリックス[6]フィリンはC2対称性の8の字形捩れ構造を持ち、特にヨードイオンを選択的に結合することを見いだした。5,5'-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2'ジピリルメタンを二炭酸-t-ブチル,ジメチルアミノピリジンと反応させると定量的にビスアザフルベンが得られた。2,2'-ジピリルメタンのビスアザフルベンと2,2'-ビピロールとの反応ではカリックス[12]フィリンをはじめとして、24個までのピロールを含む大環状カリックスフィリンが生成した。酸触媒を用いる従来法では、一旦生成した大環状オリゴマーは速い平衡によって消失するが、ビスアザフルベンを用いる中性条件下の合成では巨大ポルフィリノイドが得られる事が分かった。
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