研究概要 |
最近われわれは,Brook転位を鍵とする連続的炭素-炭素結合形成反応を駆使した[3+4]アニュレーション法を八員環形成反応に拡張することに成功した.本反応は,環状エノンのエノレートを三炭素源として用いることによって生成するビシクロ[3.3.2]デセノン誘導体の架橋鎖を酸化的に開裂することにより,一挙に多官能性八員環を立体選択的に構築できる点に特徴がある.本反応を複数のヘテロ原子を含む多環縮合構造の構築に拡張することを最終的な目的として,α,β-不飽和アシルシランを三炭素源,そして環内に酸素原子を持つα,β-不飽和オキサシクロアルケノンのエノレートを四炭素単位とする[3+4]アニュレーションによる八員ヘテロ環の合成を検討している.今年度は,昨年度の結果に基づき,シクロヘキサン環が縮合した含酸素八員環形成反応の検討を行った. シクロヘキサン環が縮合したオキサシクロヘプテノンの合成は,シクロヘキセンオキシドを出発原料とし,ビニルマグネシウムとの反応によるエポキシドの開環,生成したアルコールと1-クロロ-3-ホスホラニリデンアセトンとの反応によるエーテル体の合成,ホルムアルデヒドとのWittig反応での増炭,得られた末端ジエン誘導体の閉環メタセシス,を経て行った.得られたオキサシクロヘプテノンのリチウムエノレートとβ-置換アクリロイルシランを反応させたところ,好収率でオキサビシクロ[3.3.2]デセノン誘導体が得られた.架橋鎖の切断はナトリウムエノレートに変換後,Davis試薬で酸化してα-水酸化体とした後,四酢酸鉛による酸化的開裂により行い,二環性の含酸素八員環を得ることに成功した.
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