研究概要 |
分子内にアジド基を有する1-Methoxy-4-(2-azidomethylphenyl)-8-phenylsulfonyl-2,6-octadiyne-4-(E)-ene(1)の芳香環化反応の検討を行った。1をベンゼン中、二当量のトリエチルアミンで処理したところ、室温で速やかに反応が進行して環化物として3-Benzenesulfonylmethyl-4-methoxymethyl-phenanthridine(2)と({ [11-(Methoxymethyl)spiro[3-hydroisoindole-3,4'-cyclohexane]a-11,14-diene-10-ylidene]methyl}sulfonyl)benzene(3)を与えた。2と3はそれぞれ9%、66%の収率で得られたが、その生成比は溶媒の極性とともに大きく変化した。すなわち、低極性溶媒であるジクロロメタン中では3/2が12.4であったのに対し、ジメチルスルホキシドのような高極性溶媒では3.4と大きく変化した。一般にエンインアレンの芳香環化反応ではラジカルが生成することから今回試みた分子内環化反応でもラジカルを経由した反応が起きると予想していた。しかし生成物の比率が溶媒の極性によって大きく左右されたことから、本反応では律連段階にイオン的な反応が関与することが示唆された。特に極性溶媒中で2の生成が増したことから、1から2の反応では分子内のアジド基のイオン的な相互作用が環化反応の開始に深く関わっていることが考えられ、求核財促進型の芳香環化反応が起きたと考えられる。一方、通常の芳香環化反応によって生じたσ,π-ビラジカルは、1,5-水素移動により速やかにπ,π-ビラジカルに異性化し、さらに双性イオンにイオン化することが考えられ、最終的にこのイオン種が分子内で環化してスピロ環化合物3を生じたと考えられる。
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