研究概要 |
遷移金属元素とホウ素やヘテロ元素を含む動的錯体の構造、結合性と電子状態と反応性を明らかにした。(1)シリル架橋遷移金属2核錯体はシリレン架橋構造と見なすことも可能であり、その構造と結合性は、実験的にも理論的にも興味深い研究対象である。Pt, Pdのシリル架橋2核金属錯体の理論的研究を行い、シリルの架橋H原子はシリレン架橋とシリル架橋の中間状態であるが、全体としてはシリル架橋とみなす事が出来ること、金属間結合は通常考えられているσ結合でなく、π型に変形していること、agostic相互作用とシリルの3中心2電子相互作用が重要であることを明らかにした。 (2)さらに、類似のメチル、ゲルミル、スタニル錯体の理論的研究も行い、これらも同様の電子状態と結合性を持つこと、メチルでも同じような錯体を形成可能であることを理論的に予言した。Agostic相互作用はメチル<シリル<ゲルミル<スタニルの順に強くなることが示された。(3)ビスシリレンあるいはジシレン架橋2核Rh,Pd,Pt錯体の構造と結合性を検討した。Rh, Pt錯体はビスシリレン架橋構造、Pd錯体はジシレン架橋構造であること、Rh錯体ではビスシリレンとジシレン架橋構造の相互変換が電気化学的に可能であること、Pd, Pt錯体では2電子酸化が非常に大きなエネルギー不安定化を起こすが、試薬酸化では対イオンが生じるために生成系が安定化し、試薬酸化還元によりこの相互変換が達成できることを理論的に予測した。
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