研究概要 |
環状有機亜鉛および環状有機銅(I)化合物の構造と反応性に関しては、これまであまり研究されていない。本研究では、反応中間体であるメタラサイクルの構造が分子内反応と分子間反応を決めているという事実に基づいて反応を制御し、機能性π電子系化合物およびヘテロ環化合物を選択的に合成することを目的として反応を検討した。環状有機亜鉛および環状有機銅(I)化合物は、単環性メタラサイクルと二量体である大環状ジメタラサイクルとの平衡状態で存在することが予測されるので、この平衡状態を左右する因子を探し出せば分子内反応と分子間反応が自由に制御できると考えた。特に、アート型銅錯体では"higher order cuprate"と"lower order cuprate"の構造が異なるので、その差を利用すると選択的な合成反応を行うことが可能である。このような考えに基づいて本研究では、従来から知られている方法では合成の難しい8員環π電子系およびヘテロ10員環化合物を、"higher order cuprate"の[5+5]型二量化反応によって合成した。この反応を用いて、現在のところチオフェンの縮環したシクロデカ-1,3,6,8-テトラエンおよびその5,10-ジチア体および5,10-ジシラ体の合成に成功している。また、有機亜鉛化合物の[4+4]型二量化反応によってテトラフェニレンが収率よく生成する条件を見出した。この反応の二量化の選択性は主に溶媒に依存している。
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