研究概要 |
2つまたは3つの異なるモノインからの交差付加環化反応は多置換ベンゼンの合成法として有用であるが、その選択性の制御が困難であった。本研究では、イリジウム触媒によるアセチレンジカルボン酸ジメチル(以下DMADと略す。)とモノインとの高選択的交差付加環化反応を見出した。DMAD 2mmolと1-hexyne 1.2mmolを触媒量の[Ir(cod)Cl]_2/dppe存在下110℃で1時間反応させると、DMAD 2分子と1-hexyne 1分子が反応して得られるtetramethyl 5-(n-butyl)-1,2,3,4-benzenetetracarboxylateが収率98%で得られた。これ以外の生成物としてはDMADの環化三量体が収率2%で得られた。1-Hexyne以外の種々の官能基を有する末端アルキンや内部アルキンとDMADの反応も良好に進行し、2:1交差付加環化体が高収率で得られた。配位子としてdppeを用いると2:1交差付加環化反応が進行したが、配位子として1,2-bis(dipentafluorophenylphosphino)ethane(以下F-dppeと略す。)を用いると1:2交差付加環化反応が進行した。DMAD 1mmolと1,4-dimethoxy-2-butyne 3mmolを触媒量の[Ir(cod)Cl]_2/F-dppe存在下50℃で1時間反応させるとDMAD1分子と1,4-dimethoxy-2-butyne2分子が反応して得られるdimethyl 3,4,5,6-tetrakis(methoxymethyl)-1,2-benzenedicarboxylateが収率96%で得られた。DMADと3-hexyne, DMADと1-hexyneの反応においても同様の1:2交差付加環化反応が進行し、高収率で生成物が得られた。
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