研究概要 |
これまでの硫黄架橋金属クラスター錯体の研究の主眼は,金属部位における置換反応・酸化還元などに注がれていたが,本研究では,架橋硫黄の反応性について注目し,モリブデンおよびタングステンを含む硫黄架橋3核金属クラスター錯体ヘアセチレン類が付加反応するに際して起こる,炭素-硫黄結合の生成・切断に関する多様性を追求した。 成果を以下の二分野に分けて記す。 1 かご型錯体の合成・構造決定・物性測定 架橋硫黄に付加したアルキンには二重結合性が残っている。この二重結合性を利用して,硫黄架橋モリブデン錯体[Mo_3(μ_3-S)(μ-S)_3(μ-OAc)(dtp)_3(CH_3CN)]のメチルプロピオレイト(MP)との反応より,モリブデン・硫黄・炭素からなる9個の頂点をもち,閉じたかご型構造の錯体[Mo_3(μ_3-S)(μ_3SCH(CO_2CH_3)CHS_2)(μ-OAc)_2(dtp)_3]を合成し,X線構造解析するとともに特異な性質を見出した。このタイプのかご型錯体の報告例はこれまでなされていない。そのほか,ニトリロ三酢酸を配位子とする錯体[Mo_3(μ_3-S)(μ-S)_3(Hnta)_3]^<2->のアセチレンおよびアセチレンジカルボン酸(ADCA)との反応生成物の単離・X線構造解析・物性測定も行った。 2 DFT計算 硫黄架橋モリブデンおよびタングステン3核錯体[M_3(μ_3-S)(μ-S)_3(H_20)_9]^<4+>(M=Mo, W)のアセチレンとの反応性の相違に関するDFT計算を行った。
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