研究概要 |
我々は本研究の過程で新規な不斉ユニットとしてhexahydro-1H-pyrrolo[l,2-c]imidazolone骨格を開発し,幾つかの触媒的不斉工程で高い立体選択性を達成してきた.今年度は特にこの骨格を不斉配位部位とするピンサー錯体の設計・調製および触媒反応への利用について検討した. 従来ピンサー型錯体はピンサー錯体は,対応するピンサー型配位子に対する遷移金属種の反応により調製される.しかしながら我々が標的とした錯体は配位子に対するパラジウム種の導入は全く進行しなかった.標的ピンサー錯体は予め両オルト位にホルミル基を導入したアリールパラジウム錯体とプロリンアニリドの縮合によって調製された. 調製されたピンサーパラジウム錯体の触媒的利用はヘック反応および不斉マイケル付加反応において検討された.ヨードベンゼンとアクリルエステルのヘック反応はNMP中140℃にて円滑に進行した.そのTONは5億,反応時間内における平均的TOFは6500/秒であった. またhexahydro-1H-pyrrolo[1,2-c]imidazolone骨格を配位部位とする光学活性ピンサー錯体を触媒とするエチルビニルケトンとシアノプロピオン酸エステルのマイケル付加反応では目的生成物が高い立体選択性を伴いつつ定量的に得られ,特にイソプロピルエステルを用いた反応では最高83%eeの立体選択性を示し,不斉触媒としての可能性を示した.
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