研究概要 |
近未来に出現するマルチメディア高度情報化社会において,ホログラフィーが注目されている。ホログラフィーは光の干渉・回折現象を利用しており,最大の特徴は完全な三次元画像の記録・再生が可能なことである。このため,情報の表示技術としての期待が大きい。また,多重記録が可能などの特性を活かし,高密度情報記録の一つのアプローチとしても注目されている。 本研究では,高い回折効率でホログラムの書き込みが可能な優れた材料を開発することを目的として,ソフトマテリアルである高分子アゾベンゼン液晶に着目した。これまでに,高分子アゾベンゼン液晶を用いたブラック回折型ホログラムの検討を行い,高分子アゾベンゼン液晶をホメオトロピック配向させることによって,43%と従来の薄膜系ホログラム材料より高い回折効率を示すことを明らかにしている。今年度はさらなる高回折効率化を目指して,新しい高分子アゾベンゼンの設計・合成ならびにホログラムについて検討を行った。合成した高分子アゾベンゼンを用いたフィルムは,200μmの厚さにおいても光を散乱せず,極めて透明であった。フィルムに回折格子を形成させたところ,回折効率は照射時間ともに増大して13分で最大99%に達し,理論限界値にほぼ匹敵する100%の回折効率を示すことが明らかとなった。また,回折格子の書き込み光強度が43mw/cm^2と従来の350mw/cm^2よりもはるかに小さな光強度で書き込み可能なことから,合成した高分子アゾベンゼンが,高回折効率を示すだけでなく高感度で書き込みできる優れたホログラム材料となることを見いだした。
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