研究概要 |
B物理で重要な過程の多くは、終状態にニュートリノを含むため測定に不定性が残る困難があった。この研究は、電子・陽電子消滅によって対生成したBメソンの運動学を完全に再構成することで、もう一方のBメソンの運動学を定め、不定性のない測定を行えるBサンプルを解析に提供することが目的である。 今年度は、B崩壊分岐比基礎データ収集を、D^<**>チャーモニウム、DのCP固有状態を含む崩壊過程まで拡張し、実際の解析に供するBメソン事象完全再構成を、3つのカテゴリーに対して追及した。 (1)主たるハドロン崩壊過程:B→D(^*)(π,ρ,a_1)について、D^<*0>→Dγ崩壊を追加し、再構成するD崩壊4体モードまで拡張した。これに(2)B→D(^*)Ds(^*)崩壊モード、(3)B→(J/Ψ,Ψ(2S),χc1)+K(^*)崩壊モードを追加した。 現有データ(140fb^<-1>)からカテゴリー(1)では206K個のB^±、128K個のB^0(検出効率それぞれ0.28%,0.17%,純度62%,56%)、(2)は9K個のB^±、5K個のB^0、(純度60%),(3)は9K個のB^±、7K個のB^0、(純度95%)を得た。B全体では224K個のB^±、140K個のB^0の完全再構成B事象を得た。再構成効率は全体で0.23%である。なお、厳しい検出条件のもと、B^±,B^0収量を約半分に絞れば80%の高純度が得られることが確認されている。 これら再構成事象収集の流れ、検出条件/純度の評価とモニター法を確立し、関連ライブラリの整備を進め、完全再構成B事象サンプルの物理解析への適用を可能とした。 このサンプルを用い、セミレプトニック崩壊抱合過程の解析(V_<ub>測定)、DX包含過程の解析などが進行している。Bのτv崩壊などはさらに高統計を要するが、KEKBの強度増強計画の進行やSuperKEKBによって現実となる見通しである。
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