研究概要 |
昨年度は、多地点でのエアロゾル収集とPIXE分析により汚染源の特定が可能であることを示した。その際、PIXE分析はサンプリングが終了に行っていたが、サンプリング中に分析も行えることが望ましい。そこで、本年度はα線源、ポータブルX線源をX線励起源としたポータブル元素分析装置を開発し、これとミニステップサンプラーを組み合わせ、サンプリングしながらの元素分析をめざした装置のポータブル元素分析装置の基礎開発を行った。 我々は、X線の励起源として、^<241>Amα線源と、市販されているX線発生装置(COOL-X,AMPTEC)を選択した。検出器には持ち運びが便利で使用時に冷却剤を必要とせず、1〜15keVのX線に対し高い検出効率を持つ、Si-PINフォトダイオード検出器を選定した。α線源は試料に一様にα線を照射するため、検出器の周りを囲むようなリング状とし、線源から発生するX線の検出を低減するため、線源の面と検出器の面を平行にした。測定の際に重要な検出感度は、Al,Ti,Cu,Ag,Au箔を用いて決定した。約一時間の測定で十分な統計のスペクトルを得ることができた。この結果とシミュレーションにより、元素ごとの検出限界を求めた結果、一時間の測定でS〜Geは5μmの中に数μgから10μg、Zr〜Hgは10μgから100μgまでの検出が可能であることがわかった。しかしながら、本装置をミニステップサンプラーと組み合わせるには、検出感度が十分でない。また、線源取り扱い上も制約を受ける。そこで、近年発売されたポータブルX線源COOL-Xと組み合わせた装置の開発を行った。検出感度は、先と同様に、Ti,Ag,Au箔を用いて導出した。その結果、10分の測定時間でも、同様の統計のスペクトルを得ることが可能となった。検出限界は一時間の測定でTiに関しては1μg、Ag,Auに関しては数10μgになることが分かった。これは、Tiに関しては^<241>Amを用いた場合検出するのに1時間必要なものがCOOL-Xを用いた場合1分の測定で検出できることを示している。
|