研究概要 |
太陽電池は廃棄物を出さない、究極のクリーンエネルギー源として注目されているが、現在実用化されているシリコン太陽電池は、値段が高くひろく普及するにはいたっていない。これに対して、簡単で安価に作製できる色素増感型太陽電池が次世代型太陽電池として注目されている。色素増感型太陽電池には、大きくわけて、電解液を用いる湿式型と電解液の代わりに固体の正孔輸送剤を用いる固体型の2つのタイプがある。前者は、発明者の名前をとってグレッツェル型太陽電池と呼ばれ、比較的高い光エネルギー変換効率を示すが、液漏れ等、安定性の問題が指摘されている。一方、後者は電解液を使用しないため高い安全性および安定性が期待でき、実用化へのメリットが大きいが、従来の固体型色素増感太陽電池は変換効率は湿式に比べて低く、安定性も低いものであった。 本研究では、電解液の代わりに正孔輸送剤のはたらきをするp型半導体材料としてヨウ化銅を用いる太陽電池を作製し、変換効率4%近い、現時点ではトップクラスの固体型電池の作製に成功した。このタイプの太陽電池は、スリランカのテンナコン教授らのグループにより発明されたものであるが、安定性に問題があった。私たちのグループは、テンナコン教授および研究員のクマラ博士と共同で研究を進めてきた。その結果、ヨウ化銅に微量の添加剤を加えることにより、結晶が微粒子化することを見出し、これにより、光陽極材料である多孔質酸化チタン電極との密着性が向上し、電池自体の安定性も格段に向上させることができた。たとえば、初期の太陽電池では、変換効率が10日で約1/10程度まで低下してしまったのに対し、今回作成したものでは、10日後でも約8割の性能を維持できることがわかった。さらに,ヨウ化銅への添加剤についても詳しく検討し,低融点で常温溶融塩性を示すチオシアン酸塩(例えばチオシアン酸イミダゾリウムやチオシアン酸トリエチルアンモニウムなど)が,ヨウ化銅結晶の微細化および固体型色素増感太陽電池の性能において最適であることがわかった。また,その添加量については,ヨウ化銅にたいして4-5mol%であることもわかった。 以上の成果をふまえ、今後は、多孔質酸化チタン電極側や色素の改良も含めて、固体型色素増感太陽電池の性能向上を図り、実用化の目処とされる5%以上の太陽エネルギー変換効率効率実現を目指す。
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