研究概要 |
1.ジエチレントリアミン五酢酸イオン(DTPA)を化学修飾したミオグロビン(M^<II>MbDTPA, M^<II>=Zn, Fe)のDTPA部分に金属イオンを導入したミオグロビン・金属錯体複合体(M^<II>Mb{M^<III>dtpa)}, M^<II>=Zn, Fe ; M^<III>=Co)及びシトクロムcの量子移動反応経路の検討 N-末端グリシンを化学修飾したミオグロピン(M^<II>Mb{Co^<III>(dtpa)}(Glyl), M^<II>=Zn, Fe))におけるZnMbの光励起三重項状態から{Co^<III>(dtpa)}への電子移動消光反応及びFe^<II>Mbから{Co^<III>(dtpa)}への電子移動反応経路を検討した。その結果,いずれも同じ反応経路(Heme→Phe138→Leu137→{Co^<III>(dtpa)}(Glyl),18.8Å)で進行していることがわかった。また,シトクロムcのLys13に化学修飾したcytc^<II>{Co^<III>(dtpa)}(Lys13)のFe^<II>から{Co^<III>(dtpa)}への電子移動反応はthrough bond(Heme→Cys14→{Co^<III>(dtpa)}(Lys13),18.6Å)で進行することが示唆された。 2.亜鉛ミオグロビンの光学活性ビオローゲン及びキノリニウムイオンによる電子移動消光反応及び逆電子移動反応における立体選択性の検討 光学活性なビナフチル基を持つ4,4'-ビピリジニウムイオン(ビオローゲン,BNMV^<4+>)及びキノリニウムイオン(PMQ^+, PQ^+)による立体選択的電子移動消光反応及び逆電子移動反応を検討した。特に,ZnMb^<・+>とBNMV^<・3+>との逆電子移動反応では顕著な立体選択性が見いだされた。また,ZnMbの電子移動反応では蛋白質のコンフォメーション変化が律速段階に関与していることが示唆されているが,キノリニウムイオンの場合は電子移動律速であることを,今回,初めて見いだした。 3.インターカレーターを持つ半人工ミオグロビンやシトクロムcとDNAとの複合体の構築 インターカレーターとしてエチジウムイオンを共有結合させたミオグロビン及びシトクロムcを調製し,エチジウムイオンの蛍光のヘムによる消光反応を検討した。また,修飾ヘムによる再構成ミオグロビンの調製のため,アクリジンやシスプラチン錯体を結合させたヘム及び亜鉛ポルフィリンを合成した。今後,DNAとの相互作用及び光誘起電子移動反応を検討する予定である。
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