研究概要 |
光機能界面の特性を利用した電子移動を経由する各種芳香族化合物の高効率・高選択的な光酸素酸化反応の開発と、反応活性種および反応機構の解明を目的として1,2-ジアリールシクロプロパンをはじめとする芳香族化合物の光酸素酸化反応を検討し、以下の知見を得た。(1)trans-1,2-ビス(p-メトキシフェニル)シクロプロパンのアセトニトリル溶液にTiO_2粉末とMg(ClO_4)_2を加え、酸素を吹き込みながら313nm光を照射すると、効率よく3,5-ビス(p-メトキシフェニル)-1,2-ジオキソランがシス、トランスの混合物として80%の収率で生成した。また、このシクロプロパンにTiO_2およびMg(ClO_4)_2共存下光照射すると、シス-トランス光異性化反応を起こし、5/95の光定常状態混合物を与えた。これらの光酸素酸化および光異性化反応はいずれもTiO_2,Mg(ClO_4)_2,ならびに酸素が存在しない場合ほとんど進行せず、特にMg塩の添加によって著しく加速されることが明らかになった。(2)(1)の光酸素酸化反応が進行する過程の中で、反応活性種としてシクロプロパンのラジカルカチオン種に由来すると考えられる600nm付近に吸収極大をもつ青色〜青緑色の呈色が認められた。また、反応溶液のESRスペクトル測定によって、O_2^<-・>に由来するシグナルの観測に成功した。(3)ビフェニルを(1)と同条件下光酸素酸化反応を行なったが、長時間光照射しても原料のみが未反応のまま回収された。一方、電子供与性置換基をもつ4-メトキシビフェニルを用いた場合は芳香環の酸化が起こり、安息香酸がレギオ選択的に生成した。(4)溶媒効果、添加物効果、置換基効果などから上記の光酸素酸化反応に電子移動過程が関与していることを明らかにした。
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