研究概要 |
光触媒の抗菌作用については多くの研究例が報告されているが,いずれも光触媒を機能させるためには紫外線しか利用できないので,抗菌作用について紫外線の効果と光触媒の効果とを区別して議論することは不可能であった。本研究では我々のグループが開発した可視光応答性酸化チタン光触媒を用いることにより,上記の問題点の解決を図った。検討項目は以下の3項目である。 (1)微生物の影響を調査するのに好ましい光触媒の薄膜化 (2)原核微生物として大腸菌を対象に可視光-光触媒の効果を確認 (3)真核微生物として酵母を対象に可視光-光触媒の効果を確認 (1)については,ゾルゲル法をベースとする方法で可視光応答性酸化チタン光触媒の薄膜化に成功した。具体的には,硫酸チタンを原料としてアンモニアで加水分解後,過酸化水素を加えて加水分解物を解コウして得た過酸化チタン前駆体ゾルを得た。薄膜は前駆体ゾルにアンモニアを加え,パイレックスガラス基材表面にスピンコーターでコーティングし,乾燥後,350℃の温度で1時間焼成することで成膜した。(特許出願) (2)可視光応答型酸化チタン光触媒をコーティングしたパイレックスガラス基材表面に大腸菌(E.coli from)を含む水滴を滴下し,4℃で水分が蒸発しない条件で青色および緑色LEDを照射し,光照射による影響を生菌数によって評価した。その結果,LEDを照射した場合のcell numberは,青色LEDでは0.12×10^2,緑色LEDでは0.23×10^2,と光を照射しないときの4.13×10^2と比較すると明らかに減少し,光触媒の効果が確認された。(3)酵母を対象に(2)と同様の実験を行ったところ,光触媒の効果はほとんど見られなかったことから,光触媒の作用は原核細胞には有効であるが,真核細胞には効果は薄いことが示唆された。
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