研究概要 |
1.導電性高分子系のメゾスコピック構造と励起エネルギー移動 電導性高分子ポリフルオレン(PF)誘導体の蛍光SNOM像は,トポ像とほぼ対応した100nm〜数μmのwheelが観測された。これは,高湿度条件で作製した高分子薄膜に共通である。また,MEH-PPVとは対照的に蛍光ダイナミクスの場所による違いが顕著には現れず,PF誘導体では高分子間相互作用が弱いと推測される。一方,PFとMEH-PPV混合薄膜の場合,同様なメゾスコピック構造が観測されると共に励起エネルギー移動によるPF蛍光のdecayに対応したPPV発光のriseが観測された。PFおよびPPVの蛍光像,蛍光減衰曲線の比較から,ほぼ均一に混合しているが局所的に相分離が誘起されている事が示された。 2.導電性高分子から酸化チタンへの電子移動 酸化チタンペーストから薄膜作製を行いXRD,AFMで熱処理前後の構造解析を行うと共に,MEH-PPVをスピンコートそのダイナミクスの場所依存性を解析した。その結果,(a)熱処理するとナノ微粒子が60〜200nm程度まで会合するが微粒子の結晶(anatase)としてのサイズや結晶状態は変化しないこと,(b)熱処理したTiO_2薄膜の電子移動効率が一番良く,ガラス基盤上とは対照的に場所による蛍光ダイナミクスの差が余り見られないこと,等が明らかになった。これらのことから,熱処理によって増加すると考えられる表面準位等が電子移動に重要な役割を果たしていることが明らかになった。 3.SNOMを用いた励起エネルギー移動の距離依存性 試料を局所的に励起し,励起エネルギーが試料中をどの程度の距離にわたって移動しているのかを解析できるシステムをNAの大きな油浸対物レンズ(NA=1.4)とSNOMを組みあわせて作製した。この装置を用いて,自己束縛励起子が殆どできないアントラセン微結晶では,励起光の散乱像と蛍光像の比較からエネルギー移動が結晶軸に沿って1〜2μm程度の範囲まで起こっていることを明らかにした。
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