研究課題
特定領域研究
アインシュタインの一般相対論が予言するブラックホールは、人類の自然認識の根幹にかかわる重要課題である。本領域は、日本の誇るブラックホール研究を一段と発展させ、その科学的な知見を拡大することを目的として設定された。方法論は、ブラックホールに吸い込まれる物質や吹き出す物質からのX線・ガンマ線放射を、大気圏外から実験観測的に捉えることを主軸とし、観測結果を理論や計算機シミュレーションとも比較する。本研究領域では、HETE-2衛星を運用し、Swif t衛星の装置較正に貢献し、2005年7月10日には「すざく」衛星を宇宙に送り出した。将来に向けては、ガンマ線衛星GLASTおよび国際宇宙ステーション搭載MAXI装置の準備を整えるとともに、新技術として、X線カロリメータ、各種のX線偏光検出器、新型のCCD素子、ガンマ線のコンプトンカメラなどを開発し、いくつかの気球実験を実行した。呼応した理論研究も、数値シミュレーションをおもな武器として広汎に展開された。研究の結果、ガンマ線バーストは宇宙遠方でブラックホールが誕生するさい発生することを突き止め、巨大ブラックホールから一般相対論的な効果を検出することに成功し、天の川銀河の中心に潜む巨大ブラックホールの活動性を暴き、近傍宇宙でガスに深く埋もれた巨大ブラックホールを発見した。また中質量ブラックホールの候補となる一群の天体を確認し、ブラックホールにガスが降着する際に4つの状態をとることを見出した。ブラックホールから噴出するジェットや、ブラックホール形成に関連した元素の合成にも新しい知見を得た。これによりブラックホールの存在をより強化し、その性質を詳しく知るとともに、提案中のNeXT衛星などを柱とした将来のさらなる飛躍を準備できた。9本の計画研究を合わせ、査読付き論文は300件以上、国際学会発表も100件を超す。
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