配分額 *注記 |
54,730千円 (直接経費: 42,100千円、間接経費: 12,630千円)
2004年度: 14,430千円 (直接経費: 11,100千円、間接経費: 3,330千円)
2003年度: 18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2002年度: 21,320千円 (直接経費: 16,400千円、間接経費: 4,920千円)
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研究概要 |
この研究の目的は,一軸性圧縮というユニークな実験方法によって望みの方向にだけ結晶の格子を圧縮し,有機超伝導体の結晶構造と電子構造を制御することにより,超伝導状態とこれをめぐるさまざまな電子状態の関係を究明することである。 まず,伝導バンドが1/4詰まり電子間クーロン相関が強いと考えられる一連の物質の電気伝導・結晶構造・バンド構造を一軸性圧縮下で系統的に調べ,金属状態,電荷秩序状態,超伝導状態の相互関係を明らかにした。α-(BEDT-TTF)_2XHg(SCN)_4,(X=K,NH_4)の電子状態は主としてバンド構造だけで説明できることがわかったが,θ-(BEDT-TTF)_2CsZn(SCN)_4,新たに開発したα-(BEDT-TTF)_2CsCd(SCN)_4およびβ-(BEDT-TTF)_2CsCd(SCN)_4,および東京都立大学との協力によるβ"-(DODHT)_2PF_6では,長距離クーロン相関による電荷秩序が重要であることを発見した。その結果,α,β型塩の電子状態の統一的相図を提示することができた。バンドが1/2まで詰まったκ-(BEDT-TTF)_2X[X=Cu(NCS)_2,Cu[N(CN)_2]Br,Cu_2(CN)_3]では,オンサイト電子相関によるモット絶縁体状態が生じる。これらの物質の三角格子構造を一軸性ひずみによって変形して電子状態やスピン・フラストレーションを制御することにより,超伝導転移温度の上昇や非磁性スピン状態が実現できることを発見した。これらの物質では超伝導発現機構におけるスピン揺らぎの重要性が示唆された。 物質開発においては新しい超分子有機伝導体の開発と新超伝導体の発見を目指し,超分子構造を構築するための分子間相互作用としてヨウ素結合とCH【triple bond】O型水素結合に着目した。新物質開発の基盤となる安全な[1,3]diselenole誘導体の合成法を開発すると共に種々の含セレンTTF誘導体の合成に成功し,ヨウ素結合を中心とした異方的分子間相互作用を効果的に配した一連の超分子有機伝導体結晶を開発した。また,BEDT-TTF誘導体最後の未踏分子であったBEDO-TSeFの初めての合成に成功し,構造と物性に関する基本的性質を明らかにすることが出来た。
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