研究課題
基盤研究(A)
溶液中での化学反応を気相の化学反応研究手段によって観測する新しい研究分野を開拓する目的で、バルク液体から液滴を真空中にサンプリングする手法を研究した。高圧連続流体に起こる流体力学的噴霧現象(Rayleigh instability)を利用した液滴生成法を検討し、高圧液体を噴霧するノズルの作成や形状と噴霧性能を精査した。次に、より安定した噴霧が得られる方法として、高圧液体と高圧気体を同軸噴射する方法と垂直噴射する方法を検討し良好な噴霧を得た。この噴霧を引き起こす液体と気体の衝突ダイナミクスについては、流体力学的解明が過去に充分確立していないため、衝突ダイナミクスを可視化する新しい研究を展開した。まず、空気中で噴霧した液滴についてMie散乱を用いた粒径分布測定を行った。Mie散乱は、光の波長よりも大きな直径の粒子に感度を持つため、数ミクロン程度から10ミクロン程度の直径の液滴が観測された。次に、真空中での噴霧を確認するために、ノズルを真空中に入れて水や蛍光色素溶液を噴霧し、パルスレーザーや連続発振レーザーによる光散乱や蛍光発光を利用して噴霧状態を撮像した。その結果、噴霧の空間分布が明らかになり、気体・液体ビームの垂直交差型では、液滴が両ビームの平面内に散乱されている様子が明らかになった。これらについては、さらに、高速度カメラやパルスレーザーを用いたPIV(particle image velocimetry)粒子速度解析を行った。これらの結果を踏まえて、このノズルから放出された液滴に電子ビームを照射して負イオンを生成し、質量分析した。得られた負イオンの質量分布は、液滴を生成するチャンバー内の圧力に依存したが、ナノメートルオーダーの液滴が観測された。
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