配分額 *注記 |
56,550千円 (直接経費: 43,500千円、間接経費: 13,050千円)
2004年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2003年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2002年度: 42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)
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研究概要 |
かさ高いメシチル基で安定化されたシリル(シリレン)鉄錯体を用いた機構研究により,シリル配位子からシリレン配位子への置換基の1,3-転位,および金属からシリレン配位子上へのシリル配位子の1,2-転位がいずれも温和な条件で可逆的に進行することを証明した。タングステン錯体を用いて,アリール配位子もまた金属とシリレン配位子との間で可逆的に1,2-転位を起こすことを見出した。また,かさ高いアルキル基の立体保護効果を用いて,シリレン配位子上に水素を一つ持つシリレンタングステン錯体の合成と安定化に成功し,この種の錯体として初めて結晶構造を決定した。その結果,ヒドリド配位子がタングステン-ケイ素二重結合を架橋していることがわかった。このヒドロシリレン錯体はニトリル,ケトン,エノン,メタノールなど様々な極性有機分子と反応し,ヒドロシリル化,[4+2]付加環化等を経由した生成物を与えることを見出した。以上のように,幾つかのシリレン錯体上では,金属-ケイ素二重結合が重要な役割を果たす特異な相互作用や転位が起こり,ケイ素化合物に新しいタイプの化学変換を引き起こすことを明らかにした。 ケイ素,リンおよび鉄からなる三員環メタラサイクルを初めて合成・単離し,その構造,転位反応,二量化反応および様々な極性分子との反応を明らかにした。これらの反応はすべてケイ素-リン結合の開裂を伴って起こるが,これはこの三員環錯体ではホスフィド(シリレン)錯体としての極限構造の寄与が強く,ケイ素が正,リンが負に分極していること,および歪みによってこの結合が活性化されていることが原因と考えられる。なお,リンの代わりに硫黄,テルルを含む系でも同様の三員環の生成と反応が見られたが,窒素を含む系では,アミノシリル配位子の陰性原子上への移動を伴う興味深い反応が起こることがわかった。
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