研究課題
基盤研究(A)
イネやシロイヌナズナのゲノム情報を有効に活用し、最も確実に生産性を高めることができる一代雑種育種のための革新的技術を開発するため、イネとアブラナ科植物を材料として、葯特異的発現遺伝子と雄性不稔性の原因遺伝子及び稔性回復遺伝子の解析を行った。シロイヌナズナのエキシン合成に必要な遺伝子を新たに3種類見出し、それらを単離・同定することができた。これら遺伝子の変異体は発芽能を失った花粉を作るため、この原因遺伝子の解明により、F_1採取効率の高い雄性不稔系統をアブラナ科作物で作出できる道が開けた。Brassica oleraceaのmur型細胞質雄性不稔性の稔性回復系統を選抜し、それを研究材料として利用することにより、orf72をmur型細胞質雄性不稔性のミトコンドリア原因遺伝子候補として見出した。また、イネのBoro型細胞質雄性不稔性の稔性回復遺伝子Rf1を世界に先駆けて単離し、その遺伝子にコードされるタンパク質がミトコンドリアに移行してミトコンドリアのmRNAに作用することを明らかにした。Boro型以外の2種類の細胞質雄性不稔性の稔性回復遺伝子も、イネ染色体上の狭い領域に絞り込むことができ、遺伝子解明が間近となった。核遺伝子型雄性不稔性の突然変異遺伝子の解析において、アブラナ葉柄抽出物を用いた逆遺伝学的突然変異体の作出技術を開発するとともに、独自の簡易・高効率・低コスト一塩基多型分析技術を開発できたことから、核遺伝子雄性不稔を利用した新たな一代雑種育種体系の構築に展望が開けた。
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