研究課題/領域番号 |
14207027
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
呼吸器内科学
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
貫和 敏博 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (40129036)
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研究分担者 |
西條 康夫 東北大学, 医学系研究科, 教授 (10270828)
海老名 雅仁 東北大学, 病院・講師 (10280885)
菊地 利明 東北大学, 病院・助手 (10280926)
鈴木 拓児 東北大学, 病院・助手 (80344670)
前門戸 任 東北大学, 病院・助手 (40344676)
萩原 弘一 東北大学, 医学部附属病院, 講師 (00240705)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
49,920千円 (直接経費: 38,400千円、間接経費: 11,520千円)
2004年度: 13,390千円 (直接経費: 10,300千円、間接経費: 3,090千円)
2003年度: 15,210千円 (直接経費: 11,700千円、間接経費: 3,510千円)
2002年度: 21,320千円 (直接経費: 16,400千円、間接経費: 4,920千円)
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キーワード | HGF / SLPI / 骨髄由来細胞 / 組織修復 / 組織再生 / 生体防御 / ノックアウトマウス / 肺発癌 / LPS |
研究概要 |
近年増加が注目される呼吸器炎症性疾患や肺腫瘍は人口高齢化により、進化的に獲得された本来の感染防御・再生機構が逸脱し、病態形成に関与すると考えられる。本研究の目的は従来我々が検討している肝細胞増殖因子(HGF)と分泌型白血球蛋白分解酵素阻害物質(SLPI)を取り上げ、その呼吸器疾患病態における関与を解析することにある。3年度に渡る研究の成果は以下の2点である。 (1)SLPI遺伝子ノックアウトマウスの表現型解析による新知見 先にSLPIノックアウトコンストラクトを導入したES細胞よりC57BL/6でSLPI+/-を作成し、もどし交配によりSLPI-/-を樹立した。SLPI-/-の表現型として、単なる蛋白分解酵素阻害のみならず近年新たなSLPI作用が報告されている事実に着目し、大腸菌由来LPS(serotype 0127:B8、1mg/mouse)の腹腔注入による生存曲線を調べたところ、SLPI-/-では有意に生存率が低下した(p<0.01)。本結果の詳細を検討すると、第一にSLPI-/- macrophageより産生されるIL-6量に有意差があるが、IL-1β、TNF-α、NO産生には有意差を認めなかった。興味あることにSLPI-/-由来B細胞の増殖やIgM産生は亢進した。一方in vitroの系ではSLPI-/- macrophageでは炎症関連核因子IkB-β発現が抑制され、相対的にNFkBのDNA結合能が増強した。これらの事実はSIPIのより広範な生物活性を推察させるものである。さらに腫瘍形成初期炎症反応のSLPI関連をウレタン誘発(1mg/g body wt)肺腺癌形成系で検討したところ、SLPI-/-では有意に肺発癌が抑制された。これはEGF受容体系のシグナルも関与し、腫瘍組織SLPI高発現の生理的重要性を示唆し、未知のSLPI結合蛋白同定の必要性を示すと共に、肺発癌機構やその予防に重要な示唆を与えるものである。 (2)肺の炎症に関与する宿主骨髄由来細胞の動態に関するHGFの新作用 大阪大学岡部研究室よりGFPマウスの分与を受け当施設で増殖した。C57BL/6(雌、10-12週令)に6-10Gy放射線照射後、GFPマウス由来骨髄細胞(10^6cells/mouse)を静注し、安定した4-6週後、bleomycin肺傷害を惹起した。対照は4-6週後末梢血、肺胞macrophageの50%以上がGFP陽性細胞であるが、bleomycin傷害により2週後にCD34、CD31陽性細胞でGFP陽性の骨髄由来細胞が炎症肺の切片に多数見られた。同条件下にHGF遺伝子発現系を用いてHGFの効果を検討したところ、HGFは骨髄よりの細胞動員にはむしろこれを抑制し、一方で障害肺胞上皮細胞の細胞死抑制活性を増強することにより、組織修復の方向が進むことが明らかになった。本結果は経血管性肺特異性plasmidによるHGF発現として併せ報告したが、最近骨髄由来fibrocyteによる肺線維化促進の知見に対し、その抑制はHGFの新たな作用である可能性を示唆する。
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