配分額 *注記 |
50,180千円 (直接経費: 38,600千円、間接経費: 11,580千円)
2004年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2003年度: 17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2002年度: 24,180千円 (直接経費: 18,600千円、間接経費: 5,580千円)
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研究概要 |
日本で分離された劇症型感染症を惹起するA群レンサ球菌の全ゲノム配列を決定してその構造上の比較を行った.日本で分離されたA群レンサ球菌であるSSI-1株は,ゲノムサイズが約1.9Mbとすでに米国で報告されているA群レンサ球菌の菌株とほぼ同様の大きさであった.しかし,SSI-1株ではそのゲノム構造に大きな変化が認められた.複製軸を対象に,ゲノム上の230kbと1670kb付近のrrn領域,複製終了点から等距離に2カ所のプロファージ領域の保存領域で染色体構造が入れ替わっていることが示唆された. SSI-1株のゲノム上には機能未知の遺伝子がファージ領域を中心として多数存在していた.そのうち,M1型ゲノム状には認められなかった新たなフィブロネクチン結合タンパク質(FbaB)についてその機能解析を行った.fbaB欠失株は咽頭上皮細胞への付着・侵入率が低下していたことからGASの付着に関与する新たな菌体表層分子であることが明らかとなった. 劇症型GAS感染症は,毒素ショック症候群,多臓器不全,壊死性筋膜炎などを発症し,発病者の約半数が死に至る疾患である.インフルエンザウイルス感染後にGAS感染することにより,劇症型感染症を引き起こすことを明らかとしたが,その治療方法を探索する目的で,フォルマリン不活化インフルエンザワクチンをマウスに投与して,その効果を検討した.その結果,劇症型感染は激減することが明らかとなった.さらに,インフルエンザを感染させた肺胞上皮細胞への菌体の付着は,ヒアルロン酸合成遺伝子を破壊した株で著しく抑制された.このことはヒアルロン酸を介して,インフルエンザ感染上皮細胞への付着能が増強され菌が全身へ拡散・増殖することを意味している. GASの細胞内侵入性について検討を加えるために,感染細胞の遺伝子発現プロファイルの変化および細胞内動態を共焦点レーザー顕微鏡観察により解析した.感染細胞ではミトコンドリアの機能異常を示す種々の遺伝子発現の変化が認められ,感染細胞がミトコンドリアの機能不全によりアポトーシスに陥っていることを明らかとした.また,細胞内に侵入した細胞の分解メカニズムについては,通常考えられていたエンドサイトーシス経路ではなくて,細胞質内に溶血毒素SLOを用いて脱出した菌が,細胞質ごとオートファジーによって分解されていることが明らかとなった.この知見は,A群レンサ球菌だけでなく,細胞内侵入性細菌の新たな分解システムを示唆する重要な知見である.
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