研究課題
基盤研究(A)
イオントフォレーシス(Iontophoresis)に関する研究とその臨床応用は古くから行われてきた。現在までに臨床応用されているのは主に直流通電である。しかし人体への直流通電は電気的火傷などの副作用や電気分極による浸透効率の低下、通電時間の制限などの短所がある。そこで以上のような副作用が少ない変動電場を用いたところ、薬剤の経皮的移送効率が高まることを明らかにし、その理論的メカニズムを提唱してきた。局所麻酔薬分子である塩酸リドカインを用い、セロハン膜およびヘアレスラットの皮膚を用いたin vitro実験,全身麻酔下のヘアレスラット腹部皮膚でのin vivo実験を行った。in vitroの実験においては平行平板型のセルを使用し、in vivoの実験では腹部皮膚にセルを密着させるために開発した円周電極と円形電極を組み合わせた新型セルを使用した。周波数および電圧などの通電条件を変化させることによりいずれの実験においても自然拡散に比べ有意に塩酸リドカインの移送量を増加させることに成功した。これらの実験はすべて正弦波を用いているが、現在は矩形波などの様々な波形の変動電場を用いてより浸透効率を高める最適な通電波形を探索中である。また臨床応用を可能にする更なる新型セルの開発と局所麻酔薬分子である塩酸リドカインに限らず、肝代謝が大きい薬剤や経口投与ができないため皮下注射などの、投与する際に痛みを伴う薬剤や、非イオン化分子、高分子、などの薬剤の経皮的送達を臨床応用することを目標としている。
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