研究課題
基盤研究(A)
多くの循環器系疾患の成因・進展に活性酸素・フリーラジカルが関与することが示唆されている。生体内での活性酸素・フリーラジカルの産生を無侵襲解析するために、ニトロキシルラジカルをスピンプローブ剤として生体計測電子スピン共鳴(ESR)法で解析する方法を開発し、シグナル減衰速度を活性酸素産生の指標として、多くの病態モデル動物で活性酸素・フリーラジカルの関与を明らかにしてきた。そこで本研究では、循環器系疾患である糖尿病や肥満のモデル動物における活性酸素産生を無侵襲測定した。糖尿病や肥満のモデル動物にニトロキシルラジカルであるカルバモイルプロキシルを尾静脈内投与して無侵襲計測したところ、対照群と比較してシグナル減衰速度が亢進し、その亢進はα-トコフェロールやSODにより抑制されたことから、モデル動物の血管内における活性酸素の産生が示唆された。また、この亢進はプロテインキナーゼC阻害剤CGP41251やNADPHオキシダーゼ阻害剤アポシニンにより抑制されたことから、活性酸素産生は血管内のNADPHオキシダーゼに由来する可能性が考えられた。疾患における活性酸素動態の画像解析を行う上で、その生成部位を特定の臓器・組織と対応付けることは不可欠であることから、ESRI/MRI融像システムを試作した。膜透過性の異なるニトロキシルラジカルをマウスに尾静脈内投与してESRI/MRI計測を行い、血管内のみに分布するプローブ剤と組織内にも移行するプローブ剤との体内動態の相違を明らかにした。また、ESR感度向上の目的でニトロキシルラジカルの窒素核を^<15>Nで標識した^<15>N標識プローブ剤、および^<15>Nニトロキシルラジカルの水素核を重水素で標識した^<15>N, D標識プローブ剤を合成した。さらに、動物計測における呼吸・拍動に由来するノイズを抑制するため、自動周波数チューニング制御(ATC)や自動マッチング制御(AMC)を開発し、生体計測での制御特性を検討した。以上より、本研究では循環器系疾患の中で糖尿病や肥満における活性酸素動態の無侵襲解析を行い、血管内での活性酸素産生を明らかにした。今後、ESRI/MRI融像システムや新規合成プローブ剤の適用により活性酸素動態を高感度に画像解析することで、循環器系疾患の成因・進展における活性酸素・フリーラジカル動態の解明が期待される。
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