研究分担者 |
重森 啓介 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 助教授 (50335395)
白神 宏之 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 助教授 (90183839)
中井 光男 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 助教授 (70201663)
宮永 憲明 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 教授 (80135756)
西村 博明 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 教授 (60135754)
西原 功修 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 教授 (40107131)
長友 英夫 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 助手 (10283813)
乗松 孝好 大阪大学, レーザー核融合研究センター, 教授 (50135753)
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配分額 *注記 |
42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)
2005年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2004年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
2003年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2002年度: 21,060千円 (直接経費: 16,200千円、間接経費: 4,860千円)
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研究概要 |
レーザー核融合の基本概念は,球状の燃料ペレットの周りから高強度レーザーを照射することにより爆縮させ,高密度の主燃料と高温の点火部を形成することである.ところが,レイリーテイラー不安定性を始めとする流体力学的不安定性は,燃料ペレットを破断させ,高密度に爆縮することを妨げる危険性がある.したがってレーザー核融合を成功させるには,その最大の障害であるレイリーテイラー不安定性を十分に理解し,これを抑制することが決定的に重要である. 本研究の開始前の段階で,私たちは,電子の非局所エネルギー輸送が不安定性を抑制することを明らかにしていた.これを単に自然の恵みとして受け取るだけでなく,意識的に制御することにより,レーザー核融合ターゲットの安定化方策を確立すること,が本研究の目的である. 私たちが発案した抑制策は,エネルギー輸送の3形態である熱伝導・輻射・対流の非局所性を利用するものであった.これらの輸送が流体不安定性を安定化させる理由と,それを安定化方策として成立させるための工夫は以下の通りである: (1)非局所エネルギー輸送による安定化は,マクスウェル分布のテール部分の電子が不安定面を横切つてエネルギーを運ぶためである.非局所電子を発生させるためのレーザーと,爆縮に必要な圧力を発生させるレーザーとを分離することにより,それぞれに最適のレーザー波長を選択することができる.私たちはこれをカクテル・カラー方式と名付けその効果を実証した.(Otani, to be published in Phys.Plasmas). (2)X線輻射もその非局所性により不安定性を抑制する.燃料ペレット自体をX線輻射体とすることにより,X線輻射による安定化と効率の高い爆縮を両立させた.私たちはこれをダブル・アブレーション方式と名付けその効果を実証した(Fujioka, Phys.Rev.Lett.04). (3)渦は,不安定界面の擾乱を非局所化して安定化するものである.これのみが本研究の中では最終結果の報告には至らず,現在論文執筆中の段階である. (4)これらの抑制策の実証と並んで,不安定性の理論の検証に必要な全ての物理量を測定するという研究戦略のもとに,従来は困難と思われていた物理量の計測法を開発し,不安定性の理論を厳格に検証した.その結果,長波長の擾乱の非局所性により安定化されることを示した(Azechi, Phys.Rev.Lett.07). 以上により30年もの長きにわたってレーザー核融合研究の中心的課題であったレイリーテイラー不安定性の理解とその抑制は「ゲームの終わり」に到達したと言っても,過言ではないと思う.もちろん科学の研究には終わりというものはないのであって,例えば擾乱自体の非局所性などは非常に興味深いテーマに転化するであろう.しかし,ここまで理解が進展した現段階では,不安定性の抑制策をレーザー核融合の研究そのものに適用することが,より生産的な方向ではないかと思っている.
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