研究概要 |
高・低活動系マウス(H, L)と筑波高・低情動系ラット(THE, TLE)を対象に以下のような研究を行った. H, Lにおける全染色体ゲノム走査 100個のマイクロサテライトマーカーを用いて系統比較を行った結果,9マーカーに多型があった.それらの近傍に系統差をもたらす遺伝子がある可能性が示唆された. H, Lにおける抗不安薬によるオープンフィールド行動(OFB)の変化 選択基礎集団であるICR系も含めてdiazepamとbuspironeの作用を調べた.高照明下では,buspironeは,いずれの系統でも高用量で鎮静作用を示すだけだった.Diazepamは,高照明下ではHとICRにおいて,低照明下ではLにおいても抗不安作用を示した.しかし至適用量は,H, LがICRより3-10倍高かった.選択の過程でGABA-BZD受容体複合体に変化が生じた可能性が示唆された. OFBの系統比較 H, Lを中心に,近交系マウス(C57BL/6,BALB/c, DBA/2,C3H/He, CBA/Ca)とICR系のOFBを主成分分析に用いて比較した.高照明下ではHはICRとよく似たOFBを示し,高活動・低情動性で知られるC57BLとも類縁性があった.LはDBAとの類似を示したが,活動水準はかなり低く,その点は低活動・高情動性のBALBやC3Hに近かった.低照明下では,LはHに近づき,両系の差が照明に対する感受性の違いによる可能性が示唆された.CBA, DBA, ICRでは明るさの影響はほとんどなかった. H, LにおけるOFBの長時間測定 高照明下で30分間測定した.Lの雄は時間経過とともにHに近づく傾向を示したが,系統差は消えなかった. H, LのOFBに対するドーパミン系薬物の効果 Apomorphineは用量依存的に活動量を低下させ,methamphetamineは増加させた.薬物と系統の交互作用はなく,ドーパミン系には差がない可能性が示唆された. THE, TLEの餌運搬行動 餌運搬行動は捕食危険に基づくと考えられているが,TLEの運搬率がより高く,新奇恐怖と捕食危険とは異なる機構による可能性が示唆された.
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