研究概要 |
本研究の目的は,既婚女性の就業の様態および継続の有無について,都市度の効果は見られるのか,親族ネットワークを含むパーソナルネットワークはいかなる支援的機能を果たしているのか,また,パーソナルネットワーク以外の諸変数(就業に関する意識,夫婦の役割分担,保育サービスの利用可能性等)は就業継続に対していかなる効果を有しているのか,といった諸点を明らかにすることにある. 1.こうした研究目的に基づき,平成14年度にはこれらを明らかにするための調査票の検討・作成を行い,平成15年9月に福岡市(西区を除く6区)・徳島市(全域)の2都市において2,200人ずつのサンプル(30〜49歳の女性)を抽出,11月下旬に郵送法による質問紙法で調査を実施した.有効回収票は,福岡市754票,徳島市874票であり,有効回収率は,それぞれ34.3%,39.8%であった. 2.この調査結果の分析から得られた主な知見は,以下の通りである. (1)福岡市と徳島市とを比較すると,都市度の低い徳島市の方が,既婚有子女性の就業率は有意に高い(既婚女性の就業率は,福岡市68.0%に対し徳島市74.3%である). (2)(1)の結果について,福岡市の夫の方が高収入に位置する者の比率が高く,ダグラス=有沢の法則が成立していることを確認できる(配偶者の収入の高さは,就業抑制要因である). (3)(2)以外の要因で,徳島市既婚有子女性の就業を促進している要因としては,地理的移動が少なく,三世代家族が多いこと(福岡市14.5%に対し徳島市30.7%)をあげることができる. (4)また,別の要因として,世帯外の親族関係ネットワークが豊かであり,空間的に狭く,接触頻度の高い,密なネットワークを構成していることを指摘できる(親との同居,サポート提供できる世帯外親族の存在は,就業促進要因である). (5)対象者本人が「国公立」大卒である場合の方が,同じ大卒でも,「私立」大卒より就業継続効果が有意に高い.
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