研究分担者 |
田村 毅 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (90011379)
塩川 徹也 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (00109050)
月村 辰雄 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50143342)
塚本 昌則 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (90242081)
竹内 修一 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (40345244)
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配分額 *注記 |
14,900千円 (直接経費: 14,900千円)
2004年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
2003年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
2002年度: 8,900千円 (直接経費: 8,900千円)
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研究概要 |
平成14年度から3年間行なわれた本研究は,フランス詩のフォルムの変遷と文化史的要因との関わりを多面的に捉えることを目的とした。フランス文学千年の歴史の全体を視野に収めながら,研究の重心は近代詩,とくに17,18世紀の劇詩・叙事詩優勢の時期を経て16世紀の叙情詩が変容を遂げながら復活する19世紀の詩の諸相に置かれた。なかでも,伝統的な韻文詩を最も高い完成に導くとともにそこに衰微の徴を刻印し,その一方で散文詩という新しい形式を練り上げたボードレールには,当然ながら特別な照明が当てられた。ボードレールは,詩史的に枢要な位置を占めるにとどまらず,詩人として,また文芸・美術批評家として,同時代のメディアに深く関わった点においても,本研究にとって格好の考察対象となった。平成15年5月には,本研究の中間的な総括を行なうと同時に新たな展開の跳躍台とするために,内外の第一線の専門家を招聘し,東京大学において国際シンポジウム「ボードレールと詩のフォルム」を開催した。3年にわたる本研究の核にはこのシンポジウムがある。 頽廃の感覚と不可分な韻文詩の叙情性,ある種の長篇詩と簡潔を尊ぶ構成美学との齟齬,16世紀以来の韻文詩の伝統である「詩の墓」の19世紀における変容,散文詩と韻文詩の叙情の質的相違,散文詩の生成過程における隣接ジャンルの関係,ドラクロワやギースへの共感からうかがわれる絵画芸術から詩への影響,散文詩における群衆と憐憫の主題,「笑い」をめぐる詩人の思考を通しての,演劇や風刺画と「反-自然」の詩学との関わり,意識の深みの探求をめぐる後世(ヴァレリー)との対比などに光が当てられた。いわば,長い詩的伝統を屈折させ,新たな複数の方向への展開を可能にするプリズム装置としてボードレールを捉え,彼を介してフランス詩のフォルムの変容をたどることが試みられた。このシンポジウムをベースに,新たな協力者も加えて,さらに研究を推し進めた成果を別冊報告書にまとめた。今後,詩の発表媒体としての新聞・雑誌とフォルムとの関係,近代詩人とジャーナリズムとの美学的・イデオロギー的葛藤などの側面を掘り下げながらいっそうの展開を図りたい。
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