研究課題/領域番号 |
14310216
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
独語・独文学
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
保坂 一夫 日本大学, 文理学部, 教授 (20074289)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2005
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
5,100千円 (直接経費: 5,100千円)
2005年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2004年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2003年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
2002年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 希望 / 人間の本質 / 未意識 / 未存在 / キリスト教弁証法 / 相乗された生 / 芸術 / 美学 / 否定美学 / アドルノ / ブロッホ / 現実肯定性 / 衝動理論 / 象徴 / 歴史哲学的美学 / 突然性美学 / 帰国亡命者 / 弁証法 / 弁神論 / アポリア / ロマン主義 / 文化遺産 / 表現主義論争 / ユートピア / 突然性 / 連続性 / 実証主義 / 物活論 / カントの3批判 |
研究概要 |
「われわれは何ものか?われわれはどこから来るのか?どこへ行くのか?われわれは何を期待しているのか?何がわれわれを待っているのか?」エルンスト・ブロッホの主著『希望の原理』はこの5つの問いで始まっている。そして、これらの問いには彼の哲学がすべて包括されている。すなわち、人間主体の本質はそれ自体では見出しえず、人間の過去と未来の関係の中から究明されるものであるが、人間も世界も依然としてそれら自身の究極的自己実現への途上にあり、したがって、人間主体の期待内容と世界主体の期待内容とが実現されて初めて「人間とは何か」という問いに最終的解答が与えられることになるというわけである。 人間のみならず世界も夢を見ていると考えるブロッホの、いわば「未意識と未存在の哲学」は、したがって、その実現にアポリアを抱えている。すなわち、意識としても存在としても未決定である人間と世界が決定されるとすれば、その想定自体が両者の前提的規定に矛盾するのではないかという疑問にどう答えられないと思われるからである。ブロッホはこのアポリアに、人間と世界の可能性をキリスト教的弁証法的に、時間的に把握しなおすことによって答ええたと主張するが、現在の認識からすると、それは依然としてひとつの仮説にとどまっていると考えられる。 ブロッホにとって芸術とは「相乗された生」である。つまり芸術は、過去、現在の現実の模倣ではなく、その中の未決の未来を導きの糸にして可能な未来をアレゴリー的かつ象徴的な一時的な達成として表現することであり、そのすぐれた作品は実証的でありながら未完の未来へ開かれていることによって、一時代の達成と未来とを完璧に現実化できることになるのである。ブロッホはこうして、美学でも時間的に否定性を肯定性に結びつけるが、哲学の場合と同様に、彼の美学も依然として美の実現のアポリアを論理的に解決する興味深い仮説にとどまっている。
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