配分額 *注記 |
13,400千円 (直接経費: 13,400千円)
2004年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
2003年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
2002年度: 10,200千円 (直接経費: 10,200千円)
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研究概要 |
紅色光合成細菌の光合成初期過程における機能発現には,LH2,LH1と言う2つのアンテナと,光反応中心複合体(RC)の3つの色素蛋白複合体が関与している。本研究では,光合成初期過程の機能解明に資する事を目的として,精密有機合成化学技術を駆使して構造を改変した光合成色素カロテノイドを,天然由来のアポ蛋白系に再構築することにより,人工の色素蛋白複合体を創成し,その光機能を調査した。代表的な研究成果として,次に述べる6つを達成した。 (1)アナログカロテノイドの大量全合成:天然カロテノイド(スフェロイデン,スピリロキサンチン,およびリコペン)と同一の炭化水素骨格を有するが,ポリエン共役鎖長の異なる一連のアナログ体大量全合成を行った。 (2)アナログカロテノイドを再構築した人工RCの創成と単結晶X線構造解析:カロテノイド欠損光合成細菌から調製したRCに,アナログカロテノイドを再構築した人工のRCを創成し,単結晶X線構造解析により原子分解能での構造決定を行った。RCへのカロテノイドの結合様式・方法に関する重要な情報が蓄積できた。 (3)LH2アンテナ色素蛋白複合体の電場変調吸収分光:2位相ロックインアンプを用いた,新たな電場変調吸収分光法を確立し,LH2アンテナ複合体に応用した。色素と蛋白の間の静電的相互作用の直接観測に成功した。 (4)アナログカロテノイドを再構築した人工RCの電場変調吸収分光:RCに結合したカロテノイドが,他の光合成色素に与える静電場の影響を初めて定量した。 (5)カロテノイドのサブ20フェムト秒時間分解吸収分光:時間分解能20フェムト秒を切る超高速レーザー分光法により,カロテノイドの光励起直後の緩和過程の実時間計測を行い,中間励起状態の検出に成功した。本研究成果は,アンテナ色素蛋白複合体におけるカロテノイドの補助集光作用の機構を解明するための本質的な情報を与えた。 (6)LH1複合体の再構築とその電場変調吸収分光:単離精製したカロテノイドとカロテノイドを除去したLH1単量体サブユニットとを,自己会合し,人為的にLH1複合体を再構築した。電場変調吸収分光法を適用することで,色素周辺の静電的環境に関する知見を得た。
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