研究概要 |
本研究は,金属ナノ接点,特に原子1個からなる金属単原子接点,が高電流下において不安定となる現象を実験的に調べるとともに,合金化による電流誘起不安定性の抑制効果を検証することを目的としている.得られた主な成果は以下のとおりである. 1.Au,Ag,CuおよびAl接点における単原子接点の生成確率はバイアス電圧の増加とともに減少し,接点が高バイアス/高電流下において不安定になることを示している.生成確率が0に低下するバイアスの値は金属によって異なり,Auでは約2.3V,Ag,Cu,Alでは0.6〜0.8Vである.しかし生成確率のバイアス依存性は金属に依らない普遍的な振る舞いを示し,不安定化が共通の機構によっていることを示唆している 2.貴金属ナノ接点の破断コンダクタンスの測定から,接点が不安定化する臨界電流密度が存在することが判明した.接点が縮小変形して電流密度が臨界値を超えると,接点は不安定になり破断する.Au,Ag,Cuの臨界電流密度はほぼ等しく,約10^<10>A/cm^2である. 3.接点が縮小変形してゆく際,1部の安定な接点は臨界電流密度を越えても破断せずに変形を続け,単原子接点にまで到達する.従って単原子接点の生成確率は不安定領域内にありながら縮小を続ける接点の生存確率であり,このような解釈に基づいて生成確率のバイアス依存性を定性的に説明することができる. 4.Ag,Cu接点は低コンダクタンス域にAuには見られない不安定領域を有している.この新たな不安定領域の存在が,Ag,Cuの単原子接点の生成確率がAuのそれよりも低バイアスで消失する原因である. 5.Au合金の単原子接点生成確率のバイアス依存性はAuAg,AuCu合金とAuPd,AuPt合金とで異なり,後者の合金の方がより低い電圧で生成確率が消失する.この溶質元素の効果が何に起因しているのか,その機構は明らかではない.
|