研究概要 |
少数キャリアー物質Ceモノプニクタイトは,特異な磁気構造を含む複雑な磁気相図および重い電子的な伝導現象を示す.本研究においては,この新しい物理現象についての認識を深めるために,(1)CePの高圧下の磁気構造の中性子散乱による研究,(2)CePの高磁場下の磁気相図の放射光X線回折による研究,(3)Ceモノプニクタイトの高圧下の磁気構造と結晶構造との関連のX線回折による研究,以上の3課題の研究を企画し以下の成果を得た. (1)まず,圧力下のCePの磁気相図に関しては,これまでの約3GPa以下の圧力下の中性子回折の研究により,圧力とともに,Ceの(001)面で,9,8,7,6,5,4,3枚周期の磁気構造が順次現れることが明らかになっていたが,本研究のの高圧下の中性子回折の実験により,3.2GPa以上の圧力で系は低温で強磁性のみを示し,さらに圧力とともに,強磁性の飽和磁化が減少することを見いだした.(2)磁場下のCePの磁気相図に関しては,放射光(SPring8)における磁場下のX線回折の実験により,これまでの研究の上限である約6Tの磁場を超えて,14Tまでの磁場下において,磁場の増大とともに,Ceの(001)面で,11,10,9,8枚周期の磁気構造が系統的に現れることが明らかになった.この結果は,CePの特異な磁気的状態に対して磁場が圧力と同等な役割を果たしているという興味深い事実を明らかにしている.上記の課題(3)については,CePに対して高圧下の格子定数の温度変化の測定をダイアモンドアンビル法を用いて行った.その結果,約3GPa以下の圧力では,低温秩序相で格子定数が減少するのに対し,系が低温で強磁性のみを示す3GPa以上の圧力下では逆に増加することが明らかになった.このことは,この高圧領域で強磁性の飽和磁化が減少する現象と合わせて考えると,約3GPaの圧力を境にして,系の4f電子状態が局在的な状態から遍歴的な状態に移り変わっていることを示唆している. 以上の研究結果を総合して考察すると,CePに代表される小数キャリアー系Ceモノプニクタイトにおいては,キャリアー密度が系の主要なパラメータであり,各物質固有のキャリアー密度ならびにこれの圧力あるいは磁場変化が,各系の多彩且つ特異な物性を規定していると考えられる.
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