研究概要 |
セラミックYAGレーザーの開発で獲得した知識,技術を基礎に,さらに新しい可能性を秘めたレーザー材料であるY_2O_3(イットリア)のセラミック材料開発を目指した。Yb:Y_2O_3はYAGよりも高い熱伝導,広帯域,より狭いパルス幅を可能にする新材料であるが,2430℃という高融点結晶のため高品質単結晶の育成が困難であった。セラミックYAGで開発した完全合成セラミック製法を応用して,Y_2O_3セラミックが1700℃で作製できた。2280℃における構造相転位を避けることができて,高品質レーザー材料の作製に成功した。Yb:Y_2O_3セラミックのCWレーザー発振で,端面励起で9.2W,最大効率72%を実現し,レーザー材料としての優れた特性が証明された。半導体可飽和吸収体鏡を用いた自己モード同期で最大平均出力420mW,パルス幅430fsのフーリエ限界パルスを発生させることに成功した。GaAsモード同期にも成功し,LD直接励起フェムト秒固体レーザーへの道を切り開いた。その過程で,セラミック材料として,YAG,Y_2O_3などの比較検討を,分光学,熱特性,機械特性など多面的な観点から推進した。その結果,多結晶体で構成されるセラミックレーザー材料は,単結晶に比べて3倍以上の熱衝撃パラメータを持つことが実験的に証明され,高密度励起,高出力レーザーに優れた特性を持つことが判明した。熱衝撃パラメータが動作限界を決める核融合用レーザーにとって,セラミックレーザーのサイズ拡大則と強度限界向上は,決定的な重要性を持つ。更にコンポジット型セラミックの開発を行い,従来の拡散結合技術に比べてオン拡散距離は5倍以上,接合面は通常のバルク面と完全に同一の機械強度を持ち,完壁な接合状態を形成していることが分かった。また同じsesquioxide系であるYb:Sc_2O_3,Yb:Lu_2O_3などの新材料のセラミック合成を行った。これらはYb:Y_2O_3と同様に広帯域な蛍光スペクトルを有し,特にLu_2O_3はYb^<3+>添加による熱伝導率低下が小さいため,高平均出力フェムト秒レーザーとして有望であることが分かった。
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