研究分担者 |
桑原 義博 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助教授 (90281196)
大野 正夫 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助教授 (00251413)
山中 寿朗 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助手 (60343331)
酒井 英男 富山大学, 理学部, 教授 (30134993)
西 弘嗣 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20192685)
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研究概要 |
カトマンズ南部の4箇所で湖成堆積物のボーリングを行い,約240mのボーリングコアを採取することができた.これらのコアと2000・2001年に採取したコア,総計約800mを日本に持ち帰り,様々な環境・気候変化のプロキシーについて分析を進め,これまでに過去約70万年前から約1.2万年前までの気候・環境変動曲線を数100年から2000年の時間精度で得ることができた.現在,約100万年前まで遡って変動曲線を復元すべく,分析を進めている. さらに,カトマンズ盆地南部の地表地質調査を行い,ヒマラヤ地域では初めてとなる詳細な第四紀層の地質図を作成することができた.ボーリングコアに関する各種基礎データについては,現地ネパールの地震防災や地下水開発・管理などにも利用できるよう,2005年度年度末を目標に報告書を作成し,ネパール地質学会から特集号として出版するよう準備中である. ヒマラヤの前縁山地の上昇に関しては,ボーリングコアの研究と地表地質調査により,約100万年前に上昇を開始したことが確実になった.また,上昇に伴って前縁山地の北側に堆積した礫質扇状地堆積物が,古カトマンズ湖を誕生させたダムとして重要な役割を果たしていたことが判明した.更にシワリーク丘陵の堆積物でも,約100万年を境に巨礫を含む扇状地性礫岩が堆積を開始していることから,前縁山地の上昇開始の原因は,プレート境界断層の位置がMBTから南方のMFTに移ったことに求められることが明らかになった. グレートヒマラヤの上昇時期については,変成帯最上部の温度が15〜14Maに急激に約120℃まで低下していることから,変成岩が最初に地表に露出し始めたのは15〜14Maであることが判明した.厚さ約10kmの変成岩ナップが蛇行河川を覆うことにより,その頃には約1万メートルに達するヒマラヤが出現していたと結論した.
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