配分額 *注記 |
14,600千円 (直接経費: 14,600千円)
2005年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2004年度: 2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
2003年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
2002年度: 5,700千円 (直接経費: 5,700千円)
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研究概要 |
貝形虫の進化を多面的に理解することに成功した.海生種として,現在もっとも繁栄するグループであるCythere上科の貝形虫は,中生代末から古第三紀に基本的な分類群が多様化したことで知られる.この上科が,他の祖先的上科(Bairdia上科,Cypris上科など)に比べ,感覚子の数や呼吸盤の剛毛の数において幼型成熟的特徴をもっていることが判明した.これらの成果は,それぞれの上科の代表種の個体発生的形態変化を丁寧に観察・記載し,それらを比較した結果得られたものである.また,日本を中心に,南はフィリピン,北はベーリング海峡を越えて北アメリカ西海岸の沿岸を調査し,Cythere上科に含まれる複数の属の詳しい進化史と進化パターンを推定することが出来た.用いた材料はLoxoconcha属,Xestoleberis属,Paradoxostoma属およびBairdia上科Neonesidea属である.これらの属に見られた共通的特徴を考察した結果,日本周辺では,世界の他地域に類をみないほど近縁種の多様性が高いこと,近縁種同士は太平洋,日本海,オホーツク海・親潮域といった海流系や海洋気候区分といった地理的・環境的要素で分布が分かれることが判明した.この原因として,おそらく地質学的に最近生じた第四紀の氷河性海水準変動およびそれに関連する緑海の孤立化・寒冷化が祖先的個体群の孤立化と寒冷に適応した突然変異体の選択をもたらしたものと考えられる.以上のように,本申請研究の結果,日本列島周辺のような縁海の連続する地域における浅海生生物の種分化・多様化のモデルを提唱することができた.
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