研究概要 |
1.サブソリダス反応組織の発達の程度による大崩山花こう岩体の冷却過程 宮崎県大崩山花こう岩体はひとつのマグマチャンバーが固結してできた累帯深成岩体と考えられている.われわれはルーフ境界から岩体深部に向かって,ミルメカイトやパーサイトなどサブソリダス反応によって形成される組織の発達程度を検討し,次のような系統的変化を見出した.(1)ミルメカイトの平均発達幅はルーフ直下で10μm,950m下で100μmと岩体深部に向かって系統的に増大する.(2)パーサイト中のアルバイトラメラの発達幅は同様に10μmから230μmまで増大する.(3)アルバイトラメラの体積分率は0.0l3から0.278へと増大する.(4)アルバイトラメラの間隔は35μmから138μmへと増大する.このことは大崩山岩体がルーフから効率的に冷却されたことを意味する.ウォール境界からの系統的変化は見出されなかった. またわれわれは,斜長石-ホルンブレンド温度計を用い,サブソリダス反応が継続した時間を見積もることに成功した.反応の継続時間をルーフ直下で15-25年程度,ルーフ下950mで150-300年程度と推定した. 2.花こう岩系の拡散律速型メルト成長の実験 花こう岩メルトが地殻の部分溶融により形成されるプロセスを再現する実験として,前年度に続いて非平衡条件下での融解実験を行い,融解のカイネティクスに関わる基礎的なデータを得た.今年度行った系は,サニディン-石英-アルバイト-水ならびにその部分系,正長石-石英-アルバイト-水ならびにその部分系である.鉱物粒子間に発達するメルト層の発達過程を調べたが,得られた結論は次のとおりで,昨年の系(マイクロクリン-石英-アルバイト-水ならびにその部分系)の場合と同じであった. (1)メルト層中には組成勾配があり,メルトの形成は拡散律速による. (3)双物型成長則からメルト中の最も遅い成分の拡散係数を見積もることができた.
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