研究概要 |
本研究の目的は,我々が最近成功した粉末試料での^<14>Nの高分解能NMR測定を一般的に行えるように完成すること,および,主にペプチドなど生体分子の構造研究に応用することである.助成を受けた2年間に以下の研究成果を得た. (1)NMR装置を構築した 三重共鳴用NMR送受信機を購入し,現有の磁場,パワーアンプ,自作プローブと組み合わせることで,最適な条件で^<14>Nの観測が行えるようなシステムを構築した.また,MAS試料回転周波数のモニターと安定化のための装置も自作・開発した. (2)間接測定された^<14>N線形の理論的な解釈を行った 本手法において得られた四重極パラメータから,窒素核周りの電子状態や構造に対する知見を得るために,まず,四重極パラメータの既知の簡単な分子を用いて,Gaussian-98などのab initio分子軌道計算による評価を行い検討した. (3)αヘリックスとβシート構造の決定 ペプチドの二次構造の代表であるαヘリックスとβシート構造に含まれる窒素の四重極パラメータの計算を行い,線形のシミュレーションを行ったところ,これらの2次構造を本手法で区別することが可能であることが示された.そこで,αヘリックス,βシートをとることが知られている7種類(αヘリックス4種類,βシート3種類)のペプチドを固相合成法により準備し,2種類の試料について測定・解析を行った.その結果,計算で予測された傾向と逆の結果が得られたが,本手法によりペプチドの2次構造を決定することが出来ることを示すことが出来た.現在,ab initio計算の見直しを行っている.
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