研究課題
基盤研究(B)
九州西岸の有明海では、1998年以降、奥部海域において、秋季から冬季にかけて大規模な赤潮が発生してきた。また、夏季には同じ奥部海域で、貧酸素化現象も発生していることが知られてきた。この研究では、2002年4月〜2005年3月まで、原則として毎月1回の割合で、小潮時から中潮時に、有明海奥部海域を縦断する方向に12調査地点、横断する方向に13調査地点を設置し、精密な水質調査を行ってきた。その結果、有明海奥部海域全体に及ぶような大規模な赤潮発生は、2002年度から2004年度には、5月、7月、10月〜11月にかけて、年間に3回発生するパターが確認された。いずれの場合も、栄養塩濃度の高い筑後川を中心とした河川から流入する淡水が、十分な鉛直混合を受けることなく、低塩分・高栄養塩濃度の表層水を形成し、その層で赤潮が発生していた。10〜11月の赤潮の場合、海況が静穏な時期にあたり、大雨などによる河川水流入量の増加がなくても、現状では赤潮が発生する状態となることが判明し、海水の鉛直混合がきわめて発生しにくくなっている。海面冷却による海水の鉛直混合は12月以降にしか発生しない。1997年以前には、この時期に大規模な赤潮が発生した記録がまったくないことから、赤潮発生の原因として1997年の諌早湾干拓事業に伴う潮受け堤防の締めきりによる有明海奥部海域の潮流の変化の関与が強く示唆される。一方、有明海の砂質干潟においてはアサリをはじめとする貝類の漁獲量が近年大幅に減少している。その原因としては、基質中に高濃度に堆積したマンガン、亜鉛などの重金属類が、生理的にもっとも弱い基質に定着した直後の稚貝の生存に大きな影響を及ぼしていることが判明した。しかしながら、その究極的な原因は、有明海奥部海域へ周辺の河川からの土砂の流入量が、川砂の採取やダムにおける砂の堆積によって大幅に減少し、過去約20年間に渡って、砂質干潟でほとんど砂が堆積しない状態が続き、その結果として重金属類の堆積が発生していることが強く示唆された。
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