研究概要 |
マイクロマシンやマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)の実用化は,機械としての信頼性を確保した上で初めて成り立つものである.とくに,近年では,従来は機能性材料として用いられていた厚さが数μm程度の薄膜が構造体として用いられるようになってきたが,その疲労を含む強度特性,切欠き感受性,さらには,曲げ・引張応力負荷モードの影響など,マイクロシステムを設計する上で必要不可欠な機械的特性データは皆無である.そこで,本研究ではナノインデンテーション用に開発されている超微小荷重負荷装置に,粗動用ステージおよびピエゾステージから構成される荷重負荷位置同定機構を組み込み,曲げ疲労試験が可能となる計測・制御システムを新たに開発することにより,サブμmから数μm厚さの薄膜の静的曲げ試験や疲労試験が可能となる薄膜用機械的特性評価試験機を試作した.ここでは,荷重負荷位置同定機構の導入に加えて,ナイフエッジ型圧子を導入し,AFMにより荷重負荷位置を正確に測定することにより,表面マイクロマシーニングにより作成した厚さ3.5μm,幅5μmのポリシリコン片持ちはりに対して精度良く曲げ試験ができることを確認した.さらに,曲げ・引張応力負荷モードが薄膜の破壊特性や機械的特性に及ぼす影響を検討するため,ピエゾ駆動アクチュエータを用いて薄膜に均一な一軸応力を負荷することのできる引張・疲労試験機を開発し,これによりポリシリコン薄膜に対して引張,疲労試験を行い,その破壊特性を評価できること,水中,乾燥空気中といった環境質を制御した条件下で,応力比0.1,繰返し速度10Hzでの正弦波形荷重制御下で疲労試験が可能なことを確認した.また,結晶粒の配向特性やその数,結晶粒サイズを考慮した有限要素モデルを用いて,ポリシリコン薄膜のヤング率におよぼすこれらの影響を検討し,実験で得られたヤング率と比較・検討した.
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