研究概要 |
次世代情報・通信機器用薄膜デバイスのように積層構造の中に様々な材料や界面が存在する場合,薄膜のはく離やクラックなど様々な破壊モードの発生が予想されるが,構造が複雑なため負荷形態に対してどのような破壊モードが発生するか明確な手法がないのが現状である. そこで,前年度に設計・製作した微小変形観察顕微鏡アダプタ付強度試験機を用いて,電子用基板に使用される織物複合材料ならびにプラスチック基板上の金属薄膜電極を対象とし,機械的引張負荷を与えながら損傷進展のその場観察を行った.特に,電子照射による材料劣化が生じないように真空度を調節して観察を行った.また,電子デバイスの疲労試験は長時間を必要とするため,大規模な試験を行うことは時間的・経済的制約から非常に困難となる.したがって,少数のデータを基に如何に疲労寿命や強度のばらつきを定量約に評価し,設計寿命もしくは設計強度を決定するかが重要となる.そこで,従来の安全率(安全係数)という経験的な係数を用いる手法に替わり,信頼性工学に基づいて強度のばらつきを確率変数として扱い,小標本の疲労試験結果を基に設計強度を決定する手法を提案した.提案手法に基づき設計用S-N曲線を表示し得るシステムを構築し,破壊確率および信頼水準を考慮した設計強度の評価が可能となる成果を得た. 本研究により構築したSuper Impose法を用いたマルチスケール解析手法や,信頼性工学に基づく実装デバイスの寿命評価手法について,材料学会誌(平成15年5月号)や日本機械学会論文集A編(平成15年9月号)において発表し,その成果を示している.
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