研究概要 |
本研究の目的はマイクロ超音波砥粒加工特有の加工現象と加工メカニズムを解明,解決することにより,サブミリサイズの構造体の安定的な加工を実現することである. まず実験装置の試作から行った.立体形状を創成するために,工作物テーブル2軸,工具送り方向1軸,計3軸のNC走査を可能とした.またサブミリサイズの構造体を加工するためには,微小径工具を用いる必要がある.微小径工具は折損しやすいため,水平方向(工具送り方向に対して垂直方向)に加わる応力を極力避けなくてはならない.水平方向に働く応力の主な原因は工具の偏摩耗である.そこで工具回転軸を設け,偏摩耗対策とした.しかし工具を回転させた場合,工具の偏心が問題となる.そのため工具を機上で成形するための装置を開発し,工具回転時の偏心を無くした. 次に開発したマイクロ超音波砥粒加工機を用いてガラスの穴あけ加工を試みた.その結果,超音波振動により発生したキャビテーションが砥粒を加工点から遠ざけている様子が観察された.また加工された穴のエッジ部分には多くのチッピングが見られた.これは砥粒がキャビテーションによりはじき飛ばされたことにより,工具が直接ガラスに接触したためであると考えられる.工具が工作物に接触することを防ぐためには,加工点に多くの砥粒を集中させる必要がある.そこで本研究では電気粘性流体を援用することを提案した.電場を与えることにより電気粘性流体の粘度が増加し,砥粒がはじき飛ばされにくくなる.また電場勾配に応じて,砥粒は加工部に集中する方向への力を受ける.その結果,砥粒を加工部に集中させることが可能となった.また電気粘性流体を援用して加工された工作物にはチッピングがほとんど発生しないことを確認した. このように新たに開発したマイクロ超音波砥粒加工機を用い,さらに電気粘性流体を援用し加工を行うことにより,チッピングの無い安定した加工を実現した.
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