研究概要 |
管路途中で枝管が主管に接合されている合流配管において,主管と枝管を流れる流体の温度が異なる場合には混合により温度ゆらぎが生じ,それが管壁に到達して高サイクルの熱疲労を与えるサーマルストライピングが発生することが知られており,原子炉などの安全性において重要な問題となっている.合流部の下流では,縦渦・はく離・再付着,再循環などを伴った複雑な3次元・非定常流が現れ,その結果,高・低温流体の混合プロセスも複雑なメカニズムを有すると考えられる.本研究の目的は,高温流体と低温流体が合流する合流配管内において,流れ場と温度場に関する詳細な実験を行い,流動場の構造と高・低温流体の混合過程,および熱疲労の発生するメカニズムを解明することにある.具体的には,流動系として互いに対向する2本の管が直角に接続された1本の管に合流する対向型T形合流配管を取り上げ,非定常流動場の計測に不可欠なダイナミックPIVシステムの構築・確立とそれによる瞬時速度場の時系列計測,ならびに熱輸送と物質輸送の相似性に基づきレーザ誘起蛍光法(PLIF)による瞬時濃度場の時系列計測を実施した.前者の流動計測では,2本の対向管内の流れが合流した界面に形成される強い速度変動,合流部直後に生じる大規模なはく離泡,合流管断面における複雑な縦渦の分布特性を明らかにすることができた.また,固有直交展開を用いて,合流界面の速度揺らぎや,はく離泡周りのせん断層における渦放出などの組織的構造とその非定常特性を抽出することができた.後者の濃度場計測では,合流界面において強い速度変動に対応した高い濃度変動が生じ,それが合流管の接合部付近に到達してサーマルストライピングを引き起こす可能性があること,また合流管断面内に誘起される縦渦により物質が輸送され,下流域では当初高濃度流体が流れていた管とは逆側で濃度が高くなることなどが明らかになった.
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