研究概要 |
本研究は,垂直加熱・冷却壁を持つ矩形容器内における懸濁液の自然対流熱伝達現象の解明を目的として,対流の可視化計測および熱伝達率の測定を行った.懸濁させる粒子には比較的粒度分布の狭い平均粒子径が数μmのSiO_2粒子を用いた.対流の可視化計測では,SiO_2粒子を,屈折率を整合させたDMSO水溶液に分散させてPIVにより速度分布を測定した.測定結果から,安定な粒子濃度分布をつけてある懸濁液を加熱・冷却した時の対流層の形成と崩壊の様子を明らかにした.次に,容器幅の変えられる実験装置を作成し,加熱冷却壁面温度差,初期粒子濃度,平均粒子径,容器アスペクト比を実験パラメータとして,懸濁液内の温度分布,粒子濃度分布,壁面平均熱伝達率を測定した.懸濁液の平均ヌセルト数は同一条件における水単相の平均ヌセルト数と比較検討された.さらに対流層が2層できる場合に対して,密度の異なる二つの単一相が上下に層を形成している対流として数値解析を行った.これらの結果から,粒子の沈降に伴う懸濁液の対流が,対流の強い順にA, B, Cの3タイプに分類できることを示し,タイプAは初期粒子濃度が低く,壁面温度差が大きい時に発現し,逆に初期粒子濃度が高く,壁面温度差が小さい時に対流が抑制され,タイプCが発現することを示した.平均粒子径が異なるが粒度分布の変動係数が等しい粒子の懸濁液において初期粒子濃度があまり高くない場合は時間平均ヌセルト数が等しくなることを示した.懸濁液の平均ヌセルト数と水単相の平均ヌセルト数との比較から,タイプAの平均ヌセルト数は水の80%以上になること,タイプAにおいて容器幅の拡大は粒子の対流抑制効果を高めることを示した.タイプAの2層形成の場合,層境界が容器高さの1/2近辺にあるとき平均ヌセルト数が最大となり,水単相の値より大きくなることを示した.
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