研究概要 |
微量サンプルの拡散係数を,短時間で測定することができ,さらに拡散係数の2次元分布の測定が可能な拡散係数測定法の開発を行った.当該研究期間に,5μlの微量サンプルの測定,100ms以下の短時間測定が実現された.また5μmの微細領域の拡散係数測定を試みた.新たに開発した測定装置は,レーザー干渉縞の照射によって試料中に正弦波状温度分布を形成し,この温度分布によって誘発されるソーレー効果を用いて溶質を駆動し,初期濃度分布を形成する.照射終了後に均一化する過程を時系列測定することで減衰時定数から拡散係数が算出できる.正弦波状の濃度分布の検出には光回折を用いたものと,光ヘテロダイン干渉計を用いたものを開発した.この拡散係数測定法は,貴重かつ微量な試料の測定や,低拡散物質の測定,および微細領域の拡散係数の2次元分布の測定などに活用できる.これらの特長を生かして,フラーレンの溶媒中における拡散係数測定などを行い,本測定装置の有用性を明らかにした.具体的には以下に示す研究成果を得た. 1.5μlの微量サンプルの測定を可能にした. 2.100ms以下の高速で拡散係数を測定することを可能にした. 3.光ヘテロダイン干渉計を用いる方法では当初は振動による位相ノイズが問題となったが,試料中の2地点の位相差を検出方式にすることで解決でき,位相安定性は±0.01°を実現した.また顕微検出系の導入により拡散係数測定の空間分解能5μmを実現した. 4.フラーレンの溶媒中における拡散係数濃度依存性の測定を行い,緩やかな山なりの濃度依存性を示し,飽和濃度近傍では特に拡散係数の低下が激しく,溶液中でフレーレンの凝集が発生していることを明らかにした. 以上の具体的な成果を得ることができ,本測定法が微小試料の測定、低拡散物質の測定や2次元分布測定に有効であることを明らかにした.
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