研究概要 |
本研究は、大阪市大客員教授であるKulatov博士らによって行われた、第一原理バンド計算の結果を念頭において、異なるスピン状態密度スペクトルを持つ窒化物磁性半導体(Ga,Mn)Nとフェリ磁性体Mn_4Nとの「スピンヘテロ接合」の作製を試みたものである。 (Ga,Mn)NはAl_2O_3(0001)面上に作製し、X線回折やホール効果測定によって、構造解析や磁気輸送特性を評価した。(Ga,Mn)N-Mn_4N系スピンヘテロ構造はAl_2O_3(0001)面上やquartz基板上ITO(Indium-tin-Oxide)上に作製し、光磁気カー効果測定や磁場依存による電流-電圧特性を調べた。 得られた結果を要約すると、(1)Al_2O_3基板上にMn添加量の異なる(Ga,Mn)N薄膜成長し、構造解析によって(Ga,Mn)N系のMnのGaN中の有効固溶限を求めた。その固溶限での(Ga,Mn)Nをホール効果測定によって評価した6.5Kから300Kまでの様々な温度での磁気抵抗の磁場依存性を測定した。200K以下の低温で負の磁気抵抗が観測されたことから、(Ga,Mn)Nのキュリー温度が約200K以下であることが明らかにされた。(2)(Ga,Mn)N/Mn_4N系ヘテロ構造を作製し、光磁気カー効果測定によってMn_4N表面層が室温で強磁性を示すことを確認した。(3)(Ga,Mn)N/GaN/Mn_4N系三層構造を作製し、磁場依存による電流-電圧特性の測定を行い、70Kにおいて磁場をヘテロ界面に対して垂直に印加することによって、電圧に依存した負の磁気抵抗を観測し、スピン偏極ダイオード特性が得られていることを確認した。
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