研究概要 |
構造物に実際に作用する動的外力の同定は構造設計やメインテナンスの合理化の観点から極めて重要な課題である.しかし,風荷重のような分布動的荷重の動的外力の直接測定には大きな困難が伴う.計測・情報技術の進展を背景に,新しい展開が期待されている.そこで,本研究においては,一辺固定鋼板小型模型を用い実験室において一連の実験をおこなった.なお供試体の動特性に関するシステム同定は,著者らが既に開発したERA法をベースにした非比例減衰系のシステム同定手法を開発し適用した.同定法として,Pseudo-inverse(一般化逆行列)法およびRegularization(正規化)法を適用し,外力としては集中衝撃力・地動慣性力および音圧を採用した.実験により,1)システム同定,ならびに外力同定に,一貫した計測システムを用いることによって,計測結果から同定されたシステムの特性をそのまま直接用いて外力同定を行うことが可能となった.このことはFEMモデルの更新などをプロセスに含む既存の手法に比べて,外力同定の解析の負荷や煩雑さを大幅に解消する利点である.2)提案する手法によって,複数の集中衝撃力,振動台ならびにスピーカーによる音圧加振で作用させた分布慣性力それぞれについて,高い精度で外力が同定可能であることを実験的に明らかにした.3)いずれの外力の場合も,Regularization法による同定結果の方が,より高い同定精度が得られた.ただし,Pseudo-inverse法についても,良好な結果が得られており,計算負荷に優れていることを考慮すると,広い範囲の実用的有用性を有するものと考えられる.以上,応答計測は常に2台のLDVのみで行っているが,一連の実験から,信頼性の高いシステム同定が可能なことを示すことができた. なお,付属物のボルト接合の損傷検出において,室内実験を実施し,劣化ボルトの位置の同定がかなりの精度で行えることを明らかにした.
|